小倉さんは考えた

やわらかければうまい。そう習ったよ。

黒字化寸前で起きたTwitterの”身売り”話。結局何だったのか説明しよう。

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Twitterが復活(黒字化)している。

ずっと赤字を続けていたTwitter社は泣きながら”身売り”先を探していたはずだ。相手はディズニーやセールスフォース等。結局、破談になるも翌年には初の黒字化。

あまりにも劇的すぎやしないか?

もちろん諸々”仕込み”である。今回はその舞台裏を語ることにしよう。※憶測だよ。

ちなみに誰にでも言える後付け的な解説ではなく、事前に予想済みである。株式投資クラスタには役立つ解説ができると思う。

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※最近の下げはFacebookの個人情報漏洩事件の余波ですよ。

会社の再建とは具体的にどんなことだろう?

会社を再建する方法は2つある。1つめは「事業拡大」、2つめは「経費の削減」である。ただし1つめの「事業を伸ばすこと」これ単体で再建を成し遂げるケースは少ない。ほとんどの再建事例は2つめの「経費の削減」によって達成されている。

Twitterは2つめの「経費の削減」を成し遂げたのだ。

※経費の削減を行い体力を回復させその後に「事業の拡大」を行う、というのが基本セオリーだ。

社長が代わるとき、会社も変わる

大事な前提がある。

「Twitterは本来赤字になるはずがない」という前提だ。YouTubeですら黒字なのに、文字主体のTwitterが赤字になる訳がない。もちろんYouTube以外の主要WEBメディア、ブログサービス、SNSだってそれぞれ黒字を確保している。

しかしTwitterは慢性的に赤字だった。理由はカンタンだ。人件費がかかりすぎていたのだ。人件費を削りさえすれば黒字化は難しい話ではない。

労働集約型ではないTwitterは”従業員の数”と”売上げ”は比例しない。だから削減の余地は大きいのだ。

ではなぜずっとそれができなかったのだろうか?

答えは「社長交代の力学」にある。

社長交代にはある種の「法則(あるある)」がある。目まぐるしくトップが変わったTwitterには大きくその力が働いたのだ。1代目、2代目、創業者が復帰したケース…それぞれ違った種類の”力学”が働く。

Twitter社を例にして、初代(創業者)から説明していこう。(と同時に、Twitter社の”身売り”話と”黒字化”の解説をしていく。そんなに長くはならないよ。)

①急成長するサービスは創業者のキャパを容易に超える

現在CEOのジャックドーシーは初代CEOでもある。だがCEOの座から降格された。「組織作り」が出来なかったからである。

だがこれは決して珍しい話ではない。ほとんどの創業者に言えることだが、創業者は事業にしか興味がない。サービスを良くする能力にはめちゃくちゃ長けているが、それ以外はからっきしだ。

サービスが急激に拡大する中で、創業者は好んで事業に集中する。その中で毎週毎週従業員は増えていく。報酬システムは少人数の時に設定されたどんぶり勘定なものだ。もちろん社内体制はグチャグチャになる。

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サービスの拡大とともに、社内は混乱状態に陥っていく。

創業者としても社内体制を一新したい気持ちはあるのだが、時遅し。コントロール出来ない状態に陥る。

その結果、社内のクレームが株主に届くことになる。どうなったか?ジャックドーシーは降格した。

あのGoogle創業者ですら、急成長の最中にみずからプロCEOを外部から招聘している。つまりサービスが急拡大する時、社内が混乱するのは極めて当然のことなのだ。

②二代目:基盤の有る無しでハードモードに

※”二代目”とはあくまでメタファーで、具体的にはこんな感じ↓

二代目社長と言っても種類がある。派閥のトップがそのまま社長になるケース。もしくはシャープのように買収されて外部からトップが派遣されるケース。株主からの推薦で派遣される社長、などだ。

基盤を持ってる場合

 大事なのは「基盤」を持っているかどうかだ。もし基盤を持っているなら、会社を再建するためにやることは一つだ。不要な人材を一掃すればよい。シャープや日産のように外部に親会社をもつ新社長は基盤を持っているので、旧勢力を根こそぎ切って会社をスリム化し立て直すことができる。派閥のトップがそのまま社長になったのなら、別の派閥を潰してスリム化を計るだろう。

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これは人間がもつ動物的な本能だ。そしてこれは歴史上何度となく繰り返されてきた合理的な行動だ。戦国時代などその連続である。組織のトップが変わると、指揮系統をスムースにすべく多くの人材の入れ替わりが生じる。

基盤が弱い場合

一方、「基盤」を持たない二代目は大変だ。味方が少ないので"理"と飴で部下を従わせるしかない。多くの場合、創業者の派閥が生きてるので、思い通りに動いてはくれないだろう。従わせるには実績を作るしかない。

とは言え、それは険しい道だ。そこで基盤をもたない二代目社長が取る最もイージーな手段がコレだ。さらなる”増員”で組織をコントロールしようとする、という荒技だ。多くの場合”多角化”の体裁をとる。自らの意向でふえる人材なので、もれなく自らの派閥に入る。

だが、急激な肥大化は経費の増大と指揮系統が危うくなるリスクを抱えることになる。

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実際Twitterの前CEO Dick Costolo氏は従業員を10倍以上に増やしている。そして国ごとに裁量と開発権限を与えた。例えば日本だけの独自機能としてニュースタブが追加されたり…等々。

これ自体はまったく問題ない。だが、数字による判断がされずニュースタブは長期間放置された。本来なら失敗したなら、消す。良い成果が出た機能は世界各国でも使えるよう一般機能として共通化すべきだったのに、だ。

僕が見る限り、指揮系統が混乱していた。開発権限を各国の現場に譲渡したことで、開発に統一した意思がなかった。また数字での管理ができていなかったのか誰も望んでない種類のプッシュ通知を気軽に連発したりとヒドい有様だった。

その混乱の根源は社長が確固たる基盤を持ってないことが原因だ。部下に渡した権限を回収しようとしたり、不要な人材を切ろうとすると、求心力を失ってしまうからだ。

その結果、どうなるか?

慢性的な赤字体質だ。

③創業者の復帰は度胸と”老獪さ”でクリアする

不調な会社に創業者が復帰した時、やるべきことは一つだ。肥大化した不要な勢力の一掃である。例えば、スティーブジョブズは前CEOが据えた幹部の粛清とレイオフ、製品ラインナップの削減を成し遂げている。

さて、赤字状態のTwitterのCEOに返り咲いたジャックドーシーだが、彼がやるべきコトも同じく「先代が増やした人件費」の削減である。前回の降格時とは違って、組織構築のノウハウ、そしてそれを実行できる人材の準備は万端だ。

彼は創業者ゆえ一定の勢力を保持している。ゆえに旧勢力を一掃する力をもっていた…訳ではなかった。初代CEOの頃とは違い、社員の9割は前CEOの頃に入社している。前のトップに恩義を感じるものも多かっただろう。

”暫定”CEOとして仮復帰した段階では社内統治ができてるとは言いがたく、最初の頃は「人件費の抑制」に取りかかるどころではなかった。特に日本では、エンジニア採用で「上限を設けない」というほどに逆の行動をとっていた。

japan.cnet.com

彼は慎重だ。レイオフは進めたものの、この空気の中で強引にコトを進めれば、造反が相次ぎ、さらなる指揮系統の崩壊を生むことになる。なんせ彼は少数派閥なのだから。

では、どうしたか?Twitterの身売りに動いたのだ。もちろん本気ではない。売却する”フリ”だ。とある口実を作るために、である。

※とは言え、株主も納得するように「売れたらラッキー」というギリギリ現実的な条件にしてあるのは言うまでもない。

jp.reuters.com

おそらくまともに情報公開すらせず「全従業員の雇用条件の維持」「時価総額×115%での買い取り」を条件にしたのだろう。ふっかけたのだ。黒字見込みが消える提案にGoogle、セールスフォース、ディズニー全てが買収を断った。もちろんこれは彼の計算通りの結果だ。

これにより「ごっそり身内を削るしかない(涙)」と堂々と言える。

大義名分が整った彼は追い込みを始める。旧勢力のトップ(幹部)に大きなプレッシャーをかけ始めたのだ。「もう退路が無いんだ。分かるよな?」と。

まず最初に逃げたのがCOO。

japan.cnet.com

次はCTOだ。

jp.reuters.com

もちろんそれ以外の幹部とその幹部派閥の人間も数多く辞めただろう。

世間的には「Twitterを見限った幹部達が続々と逃げ出してる!」ということになっていたが、現実は逆だ。ジャックドーシーにとって目障りだった勢力を追い出したのだ。

ここから先のTwitterの動きは見事だ。人件費を削減しただけではなく、空いた重要なポジションに自分の部下を据え、指揮系統を整えたことで改善スピードが大幅に上がった。

数字が分かる人間を幹部にし、取捨選択の権限を与えたのだろう。A/Bテストを行い「ダメなものは捨てる、良いものは残す」を着実に繰り返し、Twitterアプリで長年磨き上げてきた独自ブラウザすら捨ててiOS標準のものを採用するほどに合理的な判断を下すようになった。こだわりよりも数字を優先するスタイルである。(素晴らしいな)

その結果、Twitterは黒字化し復活した。

まとめ

従業員が数百、数千となると社長には高度な政治力が求められる。単なる豪腕では組織を動かすことはできない。初代CEOの頃とは違い、ジャックドーシーは恐ろしく老獪な手腕を発揮したのだ。

さて、今回の件はある程度再現性がある。株式投資で勝つならコレを覚えて今日は帰ってほしい。大事なまとめを読んだらこの記事は終わりだ。

・社長交代後の動きにはパターンがある。注視すべし。

・労働集約型ではない事業は人件費の削減余地が大きい。

・幹部達の退社はむしろプラス。

・正しく削る行動が見え始めたら、黒字化達成間近。

このことを知っていると、社長が代わった後の企業の動きが楽しく分析できるだろう。知っているだけで予想が立てられる。

個人的にはLINE社の動きに注視している。元々派閥っぽい雰囲気はあるし、執行役員の田端氏の退社の裏側とか、公開されてる情報の中で使えるものがゴロゴロころがってたりする。大塚家具も興味深いかも。

とにかく社長が代わった企業はめっちゃおもしろいので、みんなも注目すると良いよ。

おわり

この記事を書いた小倉さんってどんな人?

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アプリを作ったりメディアを作ったりしてます。コンサルも少々。

最近は小さな企業なら潰れるくらいつぎ込んでサービスを作ったりしてます。昨年末に正式リリースしてから15回くらいアップデートして、かなーり良くなったよ。

3−4日以内にさらにメジャーアップデートして別物になるよ。

いちおう、みてねー。作ったのはコチラ↓

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