海外から日本に映画が入ってくると、ポスターがダサくなる…。
それは事実だ。
実際こんな感じ。
確かにダサい。
こういうの↑を見て、他人事のように「日本人のセンスってヒドいよね」と上から目線で悲観する人が多い。だがそれは間違いだ。
説明しよう。
デザイナーのセンスの問題?
まず命題を確認しよう。
①日本人のセンスがヒドい
②だから映画のポスターがダサくなる
これで間違いないハズだ。
では、この①の日本人とは「デザイナー」のことを指してるのだろうか?もちろん違う。市場競争により”ダサい”デザイナーは淘汰されるハズだ。
したがって、この場合の「日本人」とは映画ポスターを受け入れてる「消費者」のコトを指してる。
つまり命題は
①日本の”消費者”のセンスがヒドい
②だから映画のポスターがダサくなる
と、なる。
これを前提に話を進める。
消費者のセンスは本当にヒドいのか?
まず検証すべきは
>①日本の”消費者”のセンスがヒドい
これが正しいかどうか、だ。
本当にヒドいなら他の「何か」のデザインもヒドいハズだ。
日本人のセンスが分かる「映画のポスター」に代わるもの…。
となれば、デザインセンスの塊である「CDのジャケット」を選んでも問題はないだろう。と言うことで、今日の日本のiTunesランキングTOP9を下記のように並べてみた。
日本
一方アメリカのiTunesのTOP9はこんな感じだ。
※無意識の欧米コンプレックスがあるので、下記画像の人物を全員隣国の”アジア人”だと思って見てほしい。
アメリカ
比べてみた結果はどうだろうか?
テイストの差はあるが、「両方とも有りだよね」と感じたハズだ。
つまり「日本人のデザインセンスが悪い」というのはCDのジャケットには当てはまらないので一般的な”事実”とは言えない。
だが日本に入ってきた映画のポスターがダサいのは”事実”だ。
映画ポスターの"ダサさ"とは何なのか?
日本の映画のポスターの”ダサさ”とは具体的には「文字量の多さ」を指してる。
デザインによる想像の余地を残さず、その映画がもつ情報を全力で表現してる。この必死さがダサいと言われる所以だ。
しかしダサい方が日本の消費者のウケが良い(数字が上がる)からこそ、ダサくしてるとも言える。
そうなるとまた一つ疑問が生じる。
「だったらアメリカでもそうすべきだ。なんでそうしないのだろう?」
CDのジャケットがスタイリッシュでいられる理由
この謎を解く鍵はCDのジャケットがダサくならない理由から見えてくる。
CDのジャケットがダサくない理由。つまり文字情報が必要ではない理由はなんだろうか?
その理由は簡単だ。
CDジャケットの善し悪しと購買動機が繋がらないからだ。
CDはそもそも下記のような要素がある。
・試聴する機会が多いので失敗しない。
・アーティストそのものが購入の動機になっている。
つまりCDのジャケットはどうでも良いのだ。
それゆえCDジャケットのデザインは購買動機に結びつく必要がなく”象徴”として存在できる。
アメリカの映画ポスターがスタイリッシュでいられる理由はそこにある。
アメリカではポスターそのものが購買動機に結びついていないからスタイリッシュなのである。だからこそデザイン性を重視した”象徴”でいられる。
一方日本の映画ポスターは文字量たっぷりで購買動機に結びつくべく”広告”の役割を果たしている。
つまり日本の映画ポスターは”広告”の役割を果たさないといけない要因があるのだ。それこそが解となる。
日本の映画料金は世界で一番高い
ここでやっと核心に入ることができる。実は日本の映画料金は世界でもっとも高額なのだ。アメリカでの映画料金は7〜8ドル。韓国でも800円程度。
一方、日本は1800円もする。
映画料金の国際比較|世界一高いのは日本!?インドでは30円!?
上記のランキング↑に入ってる国はほとんど全て日本よりも物価が高い。特に2位から5位の国は圧倒的に物価の高い裕福な国々だ。それらの国を押しのけて日本の映画館の料金は世界一位なのである。
(因果関係は逆かもしれないが)その値段の高さが原因で日本人は映画館にほとんど行くことがない。日本人はアメリカ人の5分の1程度の回数しか映画館にいかないのだ。※というか日本人は年に1度しか映画館に行かない。
つまり日本人は世界一のリスクを背負って希少な”イベント”として映画館に行ってると言える。
そんなイベントで失敗したらどんな気持ちになるだろうか?
失敗したら悲惨だ。高い料金を払って2時間を無駄にする。
それ故、我々は映画のポスターが単なる"象徴"としての存在することを許さないのである。我々はポスターすらも重要な情報源にしているのだ。
だから日本の映画ポスターはダサいのである。
せつないね…。
追記2017/04/28 17:15
「アメリカの宣伝用のポスターの方なら結構ダサいよ」との指摘がありました。おっしゃる通りすね…。
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