何度トライしてもSnapchatの良さが分からず、理解を諦めたおじさんも多いだろう。
僕もその一人だ。周りの業界人に聞いても大半の人間がSnapchatを諦めてる。しかしそのSnapchatは今や億単位のユーザーを抱える王なのだ。無理して学ぶ価値はある。
今から僕が書くことは4年遅れの分析だ。決して新しくはない。
Twitterの140文字と同じように
「一度見た写真は消える。」
それがSnapchatの特徴…ではない。
テキストや写真が消える前提で一から作ったUIそのものが特徴なのだ。
説明しよう。
おじさん達がSnapchatから離脱するポイント
おじさん達が離脱するポイントはココだ。
起動画面がカメラ。
初見ユーザーの気持ちになってよく見てほしい。表示されるアイコンの意味が全く分からないだろう。
「何かを撮れ。恐らく自分を。」
というのは雰囲気で分かる。
しかしそれは年齢的に痛い…気がする。
送るとしたら誰に…。
ここで並のおじさん達は続々と脱落していく。
離脱しないアプリならAppleのデフォルトアプリを見れば良い。アプリの基本はこれだ。
アイコンそれぞれの意味が一目で分かり、どこを押せば何が出てくるか大体分かる。これが基本中の基本。
しかしSnapchatはその逆。アイコンの意味は触らないと分からない。それに加えていきなり写真を撮らせる、というハードルの高さ。
初見ユーザー殺しと言ってもいいだろう。
この無茶苦茶なやり方で何億ダウンロードもされているのだ。一体どうやって…。
ポイント:Snapchatはアプリの基本を守っていない。
メッセージアプリだからできるコト
実はこの無茶苦茶さはメッセージアプリだからできるのである。
メッセージアプリにおいて、受け取ったメッセージは100%の確率で開封されるからだ。
(いかなるSNSアプリのプッシュ通知を無視できたとしても、メッセージアプリのプッシュを無視できる人間はいないだろう。)
メッセージを受け取るとこのようにどこを押せばいいか分かる。
そこを押せば消える動画や画像が楽しめる。(=快感を得られる。)
つまり一度メッセージが送られれば受け取った相手は皆Snapchatを強制的に学習させられるのである。
「受け取る側(初心者)」に対しての不親切なUIは問題ではないのだ。キーは「送る側(既存ユーザー)」だ。Snapchatの主要KPIは送信数である。送信する数が増えれば増えるほど相手は学習していく。それゆえ起動画面がカメラなのだ。
ポイント:おじさんはメッセージを受け取れないので強制学習を経験する前に離脱する。
Snapchatの本当の特徴は"省略"したこと
カメラが起動画面であることの利点はまだある。
動作を減らせるのだ。
例えばLINEで画像を送ろうとする場合、
1.LINEを起動→2.送る相手を選択→3.トークアイコンを選択→4.[+]ボタンを押す→5.カメラアイコンを選択する→6.シャッターボタンを押す→7.「写真を使用」を選択→8.確認
という8つの動作が存在する。
これがSnapchatの場合、
1.Snapchatを起動→2.シャッターボタンを押す→3.▶を押す→4.相手を選択する→5.▷を押す
という5つの動作で完結する。35%も動作が少ないのだ。
さらに、画面遷移の差が非常に大きい。
LINEがカメラを撮って送るまでに生じる"体感的"な画面遷移の回数は4回だ。
Snapchatは"体感的"には2回しか画面遷移がない。半分だ。
したがって、Snapchatは動画や画像を送ることにフォーカスし、その動作を他のサービスと比べて圧倒的に「ラク」に見せているのだ。
「"今"の気持ちを画像(動画)で送る」ならどんなサービスを使うか?
そんな時、1番ハヤイのがSnapchatなのだ。
この手軽さが後発のSnapchatを王の一人にしたと言えるだろう。
ポイント:Snapchatはハヤイ。それが特徴。
写真やテキストが消えるからカメラを起動画面にできる
ではなぜSnapchatだけが起動画面をカメラにできるのだろうか?
LINEやFacebook、Twitter、お天気アプリに至るまでアプリは基本的に「情報」そのものだ。「情報」以外がメインになるアプリはツールだ。Snapchatは写真や動画、テキストを残したりはしない。つまりSnapchatにおいて履歴は無いに等しい。有るのは「宛先一覧」と「カメラ」だけだ。そう、Snapchatはツールなのだ。
それがSnapchatがカメラを起動画面にできる理由だと言えるだろう。
ポイント:Snapchatはツールである。
省略していくと初心者ユーザーには不親切になる
結局、この記事で言いたいことはこれだ。1番ハヤイ省略したUIを追求していくとどうしても 初心者には使えないUIになるのである。初心者よりもとことん既存ユーザーの利便性を追う。その結果初見殺しのUIになる。これがSnapchatの選択なのだ。
Appleから学ぶことなく独自に作り上げたUI、これを天才だね…という一言で片付けるのも良いが、独自UIを追求して死んでいった数々の屍を考えると偶然環境に適応した自然界で言う進化(≒運)と似てるなーと思ったりもするのだ。
小倉さんがSnapchatを参考にして作ったアプリはコチラ↓